いろいろと考えさせられる本でした 2 of 3:アルトゥール・シュナーベル 著『わが生涯と音楽』
ちょっと間があきましたが、前回は、戦後の日本のクラシック音楽界に、海外の著名な演奏家の招聘および国内の若手の育成にも貢献したジャパンアーツの 中藤 泰雄 著『音楽を仕事にして 日本の聴衆に、この感動を伝えたい』をご紹介しながら、21世紀になるとさすがにいままでのような唯一無二のスター信仰というスタイルも変化せざるを得ないのではないか・・・などと書きました。
では、音楽のライフスタイルは昔からそんなものだったのか、いまだに続く「この人が世界一!」といったスター信仰などはいつ頃できたのか?私に取って、これについて考えさせた良書が、アルトゥール・シュナーベル 著『わが生涯と音楽』でした。
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シュナーベルは1882年生まれのオーストリアのピアニスト。ベートーヴェンのソナタ全集を初めて録音した人物として言及されることが多い人物。ラジオやレコードによる複製音楽の大量配信・販売がはじまったのが大体1920年頃ですが*1、シュナーベルはその変化をまたいで演奏家として活躍しました。本書の中でも、それ以前とそれ以後で、演奏家・聴衆その他のライフスタイルや考えにどのような変化が起きたのか随所で興味深い考察がなされております。
試みに一つ引用してみますと、
さまざまな国民の生活における音楽の位置は、変化してしまいました。たしかに五、六十年まえに、ここアメリカにおいて音楽の位置は、現在とは違っていたと思いますし、同様の変化はヨーロッパでも生じました。家庭における生きた音楽が−機械的再生と自動車が競争者として現われるとともに−減少したことは、いたるところで同じであったのです。もちろんひとつの相違は、ヨーロッパにおいては古い伝統があったことです。しかしこの国(引用者注:アメリカ)にも、いくつかの伝統があります。オーケストラはかなり古いですし、音楽協会もそうです。しかしこの国と同様にヨーロッパにおいても、公的生活のすべてが変化しました。第一次世界大戦後のラジオと映画と雑誌の影響は、度はずれたものであり、映画にもゆかず、ラジオをきかず、雑誌も読まない人びとにたいしてすら、影響をあたえたのです。私はそれを確信しています。私にたいする影響もありますし、しかも私は、これらの娯楽をめったに楽しむことがない人びとに属しているのです。
前掲書 P.300〜301
この類いの変化は楽器製作・販売においても起きたようです。シュナーベルは、ピアノメーカーのマーケティング事例を紹介しながら、宣伝文句と実際の質に関して持論を述べております。楽器にもまた、大量複製され、大宣伝によって大衆に消費されるスターが登場した。しかし、それはほんとうに誰もが選ぶべき「世界で一番」の質をともなっているのか・・・。*2
ラジオやレコードが普及する以前は、家庭で自ら演奏するのが主流だったとほうぼうで目にすることで、それを聞くとついついその頃の音楽好きはみな立派な音楽的教養を持っていたように想像してしまいますが、シュナーベル曰く、自分が少年時代をすごしたウィーンではそんなことはなかったそうです。ウィーンのひとびとは商業主義的で受け身で流行に左右されやすかったそうで、オーストリアからドイツへ国境をまたいだ時に、ずいぶんまじめにアマチュアが音楽に接しているのに驚いた、と語っております。
ある時期以前は、商業主義的でなかった/それ以降は違うなどと教条的に考えるのはよろしくなく、時代や地域等により、どのていどかはともかく差があったのでしょう。ラジオ・レコードの登場は、商業的で受身で流行に左右されやすいウィーンのような都会の消費社会の傾向を世界全国にくまなく広げたということでしょうか・・・
この書籍、前半が自伝を語る講演録(1945年於 シカゴ大学)、後半がその講演の聴衆とのQ&Aとなっていて、どちらにしても、かなり自由きままに語っておりまして、面白いトピックを抜き出したら切りがありません。
この後半の質疑応答編もまた大変すばらしい内容で、音楽ファンがおちいりやすい通念・思い込みをシュナーベルが解消するといった態ですが、そんなやり取りを一つ二つ引用して・・・
・・・みたいのですが、これが難しい!聴衆の一つ一つの質問に、シュナーベルは、機智・含み・意味の多様性などなどを持たせてかなり本気で回答しておりまして、お互いに「それはどういう意味ですか?」と話が深まり深まり、部分的に引用すると意味が変わってしまうような中身の濃い議論になっております。逃げるようですが、ぜひ本書を手に取ってお楽しみいただければとぞんじます。わたしも半知半解ながらあれこれ音楽書を読んで来ましたが、これほど面白い音楽談義はなかなかないと断言できます。
現在古書でしか手にはいりませんが、古書だとなんとなく敬遠される方も多いでしょうか?口調がちょっと古めかしい上に、ちょっと直訳調な部分もありますが、一読意味がわかりがたい部分もそこを読み直せばわかるという程度のものでしょう。お気になさらずぜひぜひどうぞ!*3
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さて、本書を読んだ後には、
アルトゥール・シュナーベル著『わが生涯と音楽』
白水社
ちなみに写真がすごいメンバーで、
左からフーバーマン(Vn)、カザルス(Vc)
シュナーベル(Pf)、ヒンデミット(Va)
シュナーベルがどんな演奏したのか気になることでしょう。一番有名なのは、やはり史上初のベートーヴェン ピアノソナタ全集。同じ録音が、MembranのドキュメントシリーズとEMI Referencesシリーズから発売されております。
輸入盤10枚組 アルトゥール・シュナーベル独奏
ベートーヴェン:ピアノソナタ全集
Membran Document
輸入盤8枚組 アルトゥール・シュナーベル独奏
ベートーヴェン:ピアノソナタ全集
EMI References
1932-35年の録音ですから、現代の基準で音質はクリアーとは到底言えません。また、いまのピアニストと比べて、テクニックの弱さが気になるでしょうか・・・そこは、間違いを気にし過ぎるような神経質な時代ではなかったと目をつぶりましょう!過度に主情的で自分の癖を強調し、曲ではなく、演奏家自身を表現することに熱心になるのではなく、楽譜そのものとどう対峙しているかが伝わるのは、シュナーベルに限らず、往年の名演奏家らしいところと思います。*4
上の二つのセットは中身は同じものですが、一応違いがありまして、Membranは第1番ソナタから第32番ソナタまで順番通りに収録して10枚組、EMI は例えばCD1 1,3,4番、CD2 2,5,6,7番とところどころ順序が入れ替わっての8枚組。価格はMembranの方が安価であることがほとんどでしょう。時に変動しますのでご購入の際に念のためご確認ください。
ベートーヴェンだけでは・・・とお感じの方には、EMIからバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトも入れた安価な8枚組Boxが発売されております。輸入盤8枚組 EMI ICON
アルトゥール・シュナーベル録音集
ピアノ独奏曲だけではなく、モーツァルトならピアノ協奏曲21番とト短調のピアノ四重奏曲、シューベルトのピアノ五重奏曲<鱒>も収録。シュナーベルのさまざまな面を知るには便利なセットでしょう。
では、また次回。
*1:クラシック音楽とはなれますが、同じく1920年あたりにはじまった広告宣伝の興隆史・その社会的影響を描くこの名著、スチュアート・ユーウェン著『PR!―世論操作の社会史』は、大変面白いものでした。あっちこっちのさまざまな才能をもった人物を地道に知って行くのではなく、みなが画一的に崇めるスターがどう生産・提供されたのか・・・マスメディアの発展を扱うこの書籍からあれこれと想像できます。
*2:一昔前と違って、いまは楽器の選択の幅が増えました。ロマン派の音楽も、作曲当時の楽器を使って、例えば、ショパンならエラール Érard、シューマンならグロトリアンシュタインヴェッグ Grotrian-Steinwegでの演奏など、YouTubeであれこれ見つかります。いまのコンサートグランドピアノとは違いますので、ぜひ聴いてみてください。ちなみにシュナーベルが好んだのはベヒシュタイン Bechsteinとのこと。ご参考まで https://www.youtube.com/watch?v=FsaSzJQrrf0
*3:シュナーベルが語るのは、19世紀末から20世紀に掛けての変化ですが、それ以前、18世紀から19世紀における音楽需要の変化について、ピアノ教育という視点から語ったのがこちらの書籍 岡田暁生著『ピアニストになりたい! 19世紀 もうひとつの音楽史』(春秋社) あわせておすすめです。
*4:もちろんいま現在でもいないわけではないのですが、癖たっぷりうっとり派でないとメディアに取り上げられるような人気はまずもってでないように見えます・・・
いろいろと考えさせられる本でした 1of 3:中藤 泰雄 著『音楽を仕事にして』
最近、コンサートに行こうかなと思いつつ、なんとなく億劫になっております。理由はいろいろあって、たとえば平日の夜、コンサート後にちょっとコーヒーでも飲んだら満員電車の時間になってしまいます。酔客にもまれて帰るのも嫌だなぁ・・・というどうでもいいと言えばどうでもいい事情もあれば、安いチケットはなんだかずいぶんな席で、ホールによっては終止からだをねじらないといけないし、端の席だと音もどうだったりですとか・・・
チケットの価格で言えば、バブルの頃よりもS席のチケット代は幾らか下がった様子ながら、S席・A席の範囲がやたらと広がっていまいか・・・気のせいでしょうか?
・・・とそんなことを考えながら、そもそも日本のコンサートは戦後どういう経緯を辿ったのだろうという興味から読んでみた本が、中藤 泰雄 著『音楽を仕事にして 日本の聴衆に、この感動を伝えたい』。これが中々面白い本でした。
海外演奏家の招聘を主な仕事としている(と思っておりました)ジャパンアーツの創設者 中藤 泰雄氏の著書で2008年末が初版。戦後海外通信社の一部門として事業が始まり、後に独立した同社が、中藤氏ほかの社員の方々の熱意で、演奏家・演奏団体と信頼関係を気付いて、紆余曲折たびたびの危機も乗り越えながら、発展していく姿を描いた回想録。
スメタナ四重奏団やリヒテル、ロストロポーヴィチ、キーシン、ツィンマーマン、クラシック音楽以外でもスペインの舞踏家のガデスらとの出会いがつぎつぎと語られます。
敬服するのが副題にある「日本の聴衆に、この感動を伝えたい」という想い。自らの耳と目でまず接し心底感動してこそ、招聘事業はうまくいくのだ・・・現在当たり前のように享受している来日公演の裏のさまざま苦労を知ることができます。
同社が短期的ビジネスの視点にばかり組せずに、招聘団体やその演目の選択にも冒険心をもって望み、また公演のみならず、日本でのマスターコースの開催、日本の演奏家の海外紹介などにも関わっていたことは、わたしも余り意識したことがなく目から鱗の話でした。
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この著作
『音楽を仕事にして 日本の聴衆に、この感動を伝えたい』
中藤泰雄著
ぴあ
256頁
が楽しめる方は、多分、
なども好まれるかと思います。私自身もその一人です。逆もまたしかりで、後二者が好きな方には中藤氏の著作も楽しめるかなと。中藤氏の著作のような大局的視点よりは、河島氏と音楽家との個別の交流の話になりますが。
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昨今の不況のせいか、演奏会も空席が目立ちますし、会場には年配の方が大半。不況でなくったって、30代、40代は仕事や子育てで忙しいですし、日本の企業風土では平日に演奏会など望むべくもない(というのも、実は異常なことだと思います・・・)。先日も友人と、このままだと10年後、20年後にクラシックのコンサートのお客さんどうなるのかなと話したところです。
さて、中藤氏が今後の課題として本書の中でたびたび触れる事柄がありますが、それらは我々にも望ましく興味深いものでした。記憶に残るものを挙げれば、
などなど。特にチケット代の引き下げは聴衆として嬉しいかぎりですが、これが税制の問題もあって難儀だそうです・・・この詳細は本書でぜひお確かめを。
本書に関係あるようなないようなことですが、私がなんとなく思うのが、「クラシック音楽のコンサートが特別なハレの舞台で、大金を払って、世界一の誰それの演奏を聴いて、大きな感銘を受ける」というスタイルがさすがに今世紀になって変わってきたのかな・・・ということ。
音楽に限らず、それこそ映画でも、食べ物でもなんでもそうですが、「これが日本一!世界一!みなが注目!!」と喧伝される”スター”を追っかけて、あぁそうだと納得しているのかどうかはともかく、そこに大枚はたいて満足する・・・そんなスタイルは今後も続くのか、そもそも、いつそれははじまったのか・・・
そんなことを考えるにちょっと面白い本があって、それは録音時代の初期の名ピアニスト ベートーヴェンのソナタ全集をはじめて録音したアルトゥール・シュナーベルの著書
アルトゥール・シュナーベル著『わが生涯と音楽』
白水社
ちなみに写真がすごいメンバーで、
左からフーバーマン(Vn)、カザルス(Vc)
シュナーベル(Pf)、ヒンデミット(Va)
なのですが、これを次回にとりあげてみようと思います。
では!
チャールズ・アイヴズ:ピアノ・トリオ 思わず吹き出します
本日は、チャールズ・アイヴズ Charles Ives(1874-1954)の誕生日。昨年に引き続いて、面白い録音ご紹介です。特別この作曲が好きというわけでもなく、音楽的素養がないので作曲技法のどーのこーのがなんとかもさっぱりですが、
というだけで、何となく親近感があっていろいろ聴いてみることにしております。
思わず吹き出してしまうアイヴズの逸話の数々は、昨年簡単にご紹介した(http://sergejo.seesaa.net/article/108358624.html)
Charles Ives Remembered: An Oral History (Music in American Life) 著者: Vivian Perlis 出版社: Univ of Illinois Pr
をぜひご覧下さい。50名にのぼるアイヴズの家族・友人・知人へのインタビューによって作曲家の姿を描いた一冊。英書ですが比較的簡単な会話の文章なので、語学の勉強も兼ねておすすめできます。
晩年の姿はおとぼけ爺さん全開。音楽をわきに置いても、そこで思い出として語られる古き良きアメリカの企業人の姿・そののどかな生活ぶりには、「アメリカもいつから今みたいになっちゃったんだろう・・・」といろいろ考えさせられます。*1
*****
今年のご紹介曲&録音は、思わず笑ってしまうという点で選びますと、やはりピアノ・トリオ。1900年代半ばから書き始めて、1910年代に完成されたので、大体ホリデー・シンフォニーと同じ頃の作品。
チェロ、ヴァイオリン、ピアノがつかずはなれず、静謐になったかと思うと、妙に俗になるのはいつものアイヴズ。割と聴きやすい作品と思います。とは言え、なんだこりゃと思いながらも、たまらず吹き出してしまうのが、TSIAJ:This Scherzo Is A Joke と名付けられた第二楽章。奥さん曰く、これはイェール大学時代の思い出で he thinks hardly anything but a poor jokeだそうですが、きっとその通りなんだろう、、、と思わせます。それでなんだか叙情的(?)に終わるという変な曲。なんだこりゃと思いたい方には、ぜひどうぞ!
録音は、いろいろあってこだわることもないとおもいますが、
http://look4wieck.com/asearch.php?mode=on&k=ives+trio(Look4Wieck.comの検索結果が開きます)
おすすめしやすいのは、有名なボザール・トリオの廉価版セット 4枚組。*2
Philips Recordings 1967-1974 Box set, Import
演奏者: Beaux Art Trio
レーベル: Philips
アイヴズのピアノ・トリオの録音をいろいろ聴いた中では、まじめにふまじめなよい演奏。ユーモアを感じさせないといかんですよね。
このセット、安価な上に、メンデルスゾーンのトリオ第1番&第2番、シューマンの第1〜3番、ショスタコーヴィチのトリオ第2番(のみ)、ショパン、スメタナ、チャイコフスキーそしてシューマンの奥さんのクララ・シューマンのトリオを収録。クララ・シューマンのこの曲は、聴きやすくて、きりっとしながらも優しい人柄を感じさせる作品と思いました。
なかなか手が出そうで出ないけれど、聞いてよかったと思わせる室内楽の佳曲集であることもこの4枚組Box-setのおすすめポイントです。
*****
もう一つ序でながらにおすすめするのは、わたしなんぞ難しい事抜きにアイヴズの人柄が楽しいと感じるピアノ曲の自作自演集。
Ives Plays Ives: Complete Recordings at the Piano, Import
作曲者Charles Ives本人によるピアノ作品自作自演集
レーベル: New World Records
時に深刻、時に笑顔と、曲そのままにいろんな顔で弾いている姿が浮かんできそうです。時にアイヴズの調子っぱずれな歌声も聞こえてきます。ややこしいことを考えずに、曲を聴いて感じたまま、しかめっ面になったり、思わず笑顔になったりしながら、素直につきあえばいいんだろうなぁ・・・とそんなことを感じた録音でした。
*1:詳細な伝記にはこちらをどうぞ。500ページあって、そこまでアイヴズファンでない私はさすがに挫折しました・・・。面白い逸話は上のPerlisのインタビュー集で、正確な伝記的事実を抑えるにはこちらのSwaffordとなりますか。 Charles Ives: A Life With Music
著者: Jan Swafford
出版社: W. W. Norton & Company
*2:ボザールトリオの公式ホームページはこちらです。http://www.beauxartstrio.org/
最近の新譜から 2009年10月&11月 その4:ピエール・ブーレーズ指揮 SONYの録音が輸入版で再発売
今年の10月&11月に発売予定の新譜を、独断と偏見でサラリとご紹介しております。Amazon新譜なので、HMVやTowerではすでにリリースされているかも知れませんが、ご容赦を。そもそも、クラシック音楽なんて、100年、200年前の音楽を聴くのに、そんな急いでもしょうがないと、新譜情報あまり追っかけていないのですみませんっ!
さて、本日のご紹介は、フランスの作曲家兼指揮者ピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez。フランス語をちょっとかじったことがありますが、ブレーズの方が近いですが、細かいことを言ってもなんですっ)のSONY時代の録音が再発売。交響楽団は、ニューヨーク・フィル、クリーヴランド管弦楽団などアメリカの楽団がメインといってよいでしょうか、、、?録音年はざっくり1970年代&1980年代が主。
後日注:
下にずらずらリンクしてあるBoulez Editionですが、その後廃盤となり、2014年にブレーズのソニー録音全集67枚組が出ました。こちらを揃えるのが結局安くつくということに・・・。Pierre Boulez: The Complete Columbia Album Collection Limited Edition, 67CD Box set, Import
ウィーン学派やストラヴィンスキー、バルトーク等々、20世紀に入ってからの音楽をひとまず知っておきたい場合に便利ですし、価格と質の両面からも第一におすすめできるセットです。
ピエール・ブーレーズ生誕90年(1925年3月26日生まれ)を寿ぎ、ブーレーズがコロンビア〜ソニー・クラシカルに残した全録音を史上初めてCD67枚組に集大成。
販売元: SONY MUSIC
開いた先のレビューにありますが、ブレーズが演奏に直接関わってないものは省かれているのがちょっと問題に・・・。それはちょっとややこしいのですが、元々のブレーズのレコードには入っていたリートなどは、演ずるのは歌手とピアニストですから、ブレーズは演奏者ではない。それが故に、このブレーズ・コンプリートから省かれた・・・という事情。こんなことしたら、その録音の収めどころがないのに、レーベル側はなにを考えているのか、という余計なお世話の所産であります。
・・・とは言え、そんな省略も少ないので、あまり気になさらずとも良いかと思います。後々そこまで気になるほど、○○の音楽が好きだ!という方なら、中古でもなんでも手に入れたりなんなりどうにでも解決はできますので・・・
輸入版でもちょっと買いにくい状態だったので、嬉しいニュースです。自作自演の指揮もあり。幾つかリンクしておきます。
Boulez conducts Boulez: Pierre Boulez Edition
指揮: Pierre Boulez 演奏: Ensemble Intercontemporain, BBC Symphony Orchestra, New Philharmonia Orchestraほか
販売元: SONY MUSIC
Stravinsky, Messiaen, Dukas, Falla: Pierre Boulez Edition Import
指揮: Pierre Boulez 演奏: Ensemble Intercontemporain, BBC Symphony Orchestra, The Cleveland Orchestraほか
販売元: SONY MUSIC
Schoenberg 1 : Pierre Boulez Edition, Import
指揮: Pierre Boulez 演奏: Ensemble Intercontemporain, BBC Symphony Orchestra, New York Philharmonicほか
販売元: SONY MUSIC
Webern, Carter, Varese, Berio : Pierre Boulez Edition, Import
指揮: Pierre Boulez 演奏: Ensemble Intercontemporain, London Symphony Orchestra, New York Philharmonicほか
販売元: SONY MUSIC
Berg: Pierre Boulez Edition, Import
指揮: Pierre Boulez 演奏: BBC Symphony Orchestra, London Symphony Orchestra, New York Philharmonicほか
販売元: SONY MUSIC
先鋭的な作曲家らしいと言っていいのか、世間のイメージに沿って深々と充実した音で気持ちよく響かせる・・・というより、リズムや楽器の音のバランス等々ちょこちょこと変わった事をしているのが面白いところ。と言って、自分勝手な想いに耽溺しているわけではないので、先鋭的だけれど人にはおすすめしやすい・・・かな。
個人的には、90年代以降の欧州楽団を率いたブーレーズの録音よりも、なんといいますかドライでいいかなぁと。近年の録音について、ブーレーズが丸くなったという言い方も聴きますが、楽団の得意していること・作る音の違いも大きな要因と思います。
*****
ついでに、現代音楽方面での新譜で少し気になったものを挙げますと・・・
現代曲というイメージともまた違うかもしれませんが、19世紀後半から20世紀半ばのイタリアの作曲家ピツェッティの録音。映画音楽的と言っていいのか、聴きやすいと思います。
Pizzetti: Canti della stagione alta(ピアノ協奏曲 真夏の歌)
レーベル: NAXOS
Pizzetti, I.: Concerto Dell'Estate(夏の交響曲) / La Festa Delle Panatenee
レーベル: NAXOS
次は、懐かしい名前ですが、デュオのコンタルスキー兄弟。再発売と思いますが、シュトックハウゼンのピアノ曲。
うっかり兄弟と書きましたが、これはお兄さんのAloysさんだけの録音のようですね。
シュトックハウゼン:ピアノ作品集、ミクロフォニー1&2(2枚組)
演奏: Aloys Kontarsky
レーベル: SMJ
コンタルスキー兄弟というと、メシアンのデュオの曲を人に推薦してもらったのですが、昨年の生誕100年のBoxにも入っておらず残念です。コンタルスキー兄弟全録音Box-setなんてあっても良さそうなのに・・・
下のものは、開いたアマゾンの頁にある内容紹介を読んでちょっと気になりました。不勉強で誰が誰なのかさっぱりですが・・・
アーティスト・プロフィール・シリーズ~ラルフ・ファン・ラート Box set, 5CDs, Import
演奏: Ralph van Raat
レーベル: NAXOS
そこに名前が出ていたJohn Adamsさんと同一人物と思いますが、いまとなってはタイムリーと申しますか、変わったオペラの発売あり。
Adams, J.: Nixon in China
Marin Alsop指揮 Colorado Symphony Orchestra
レーベル: NAXOS
『ニクソン訪中』とはこれいかに。Wikipediaの英語頁に詳細な内容がありました(http://en.wikipedia.org/wiki/Nixon_in_China_%28opera%29)。小生YouTubeにオペラのライブの断片があって幾つかみてみた程度ですが、ニクソン大統領夫妻、キッシンジャー、毛沢東夫妻を主要登場人物に、シニカルかつシュールな政治風刺劇といったもの。
存外聴きやすいですし、アメリカの政治風刺漫画サウスパーク(http://www.southparkstudios.com/)などが好きなクラシック・ファンには、気に入る物かもしれません。
聴かなくてもなにか損するようなもんでもないと思いますが・・・
CDの録音は、何種類かあるので今回のニューリリースにこだわることもないようです。
http://look4wieck.com/asearch.php?mode=on&k=nixon+in+china(クリックすると、Look4Wieck.comでのAmazon検索結果が開きます。)
では!
最近の新譜から 2009年10月&11月 その3:スメタナ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集(8枚組)&ゲンリヒ・ネイガウスのピアノ録音集(11枚組)
引き続き、2009年10月&11月の新譜からわたしがちょっと気になった物をずらずらっと並べます。今日は二つで、共に2009年11月18日発売予定で、現在予約受付中。
一つ目はかなり嬉しい!もので、チェコの名カルテット スメタナ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集(8枚組)がセットになって再発売!いままでバラ売りで、在庫切れだったものも多くて、困っておりました。録音は1976〜1985のおよそ10年間で行われたもの。
ベートーヴェン弦楽四重奏曲は、他にもブダペストSQ、ズスケSQ等々名盤が多いですが、スメタナ・カルテットも負けず劣らずのできなんでしょうか?まだ聞いてないのでなんともですが・・・。
スメタナSQ - ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
スメタナ四重奏団
レーベル: 日本コロムビア
クリスマス・プレゼントなどで、友人・知人をクラシック・ファンに近づけたい場合などにもおすすめです。
クラシックのCDやDVDをプレゼントする場合、よくご存知の方だとどれを選んでいいか気兼ねしてしまうのですが、「今から聴き始める方」向けなら気も楽です。私も、よく誕生日や結婚祝いその他でそうすることがありますが、「意外と面白かった!」と喜んで貰って、それこそ意外に好評です。実際のところは、それも単なるお世辞で贈った当人があまり聴いてないとしても、そのお子さん、もしかしたらお孫さんがお聴きになる可能性はありますし。
ベートーヴェンの四重奏の全集など傑作中の傑作も多いのですし、持っていて損は無いと、そこは気にせず贈っております。
序でながら、ズスケSQとブダペストSQのものも。
ズスケSQ - ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集 7CD, Box set, Import
ズスケ四重奏団
レーベル: Brilliant Classics
THE BUDAPEST STRING QUART Plays Complete Beethoven String Quartets Box set, CD, Import
Budapest SQ
レーベル: SONY
どちらもも基本的にしっかりした演奏で、奇抜な解釈などなく、基本に忠実。どれで聴いても損はなく、ベートーヴェンのこの曲を掴み損なった!ということはないでしょう。
ざっくり印象的に違いを言いますと、ちょっと固いかも知れないけれど、色つやがあって激しいのがブダペストSQ。アンサンブルはほんとブダペストは合ってますよね。固さは録音のせいなのかも知れません。あてずっぽうで言っておりますが・・・
ブダペストを激しさというなら、丁寧で綺麗、若い頃の佳曲でもじわじわ面白いのがズスケ・カルテット。わたしはベートヴェンのいわゆる中期のラズモフスキーがいまいちピンと来なかったのですが、ズスケ・カルテットを聞いておもしろくなりました。
名曲ぞろいなので、二組揃えて、どういう違いがあるか聴くのも楽しいかもしれませんね。
後日注:
このあと、スメタナ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集を聞いてみたのですが・・・なんでしょう、個々の演奏が技術的に引っ掛かるところがあり、またアンサンブルもややこしいところでやや乱れがあり・・・真面目に聞いていると、ちょっとあれかな・・・。もう少し古いスメタナ四重奏団の録音を聞いた経験から、「あれ?なにか調子が悪いのか・・・」と感じました。
この全集、特にベートーヴェン後期の曲は1980年代の録音になりますが、スメタナ四重奏団の解散は1989年。やっぱり演奏に衰えがあったのでしょうか?ライナーノーツにも、彼らの全盛期は1960年代から1970年代に掛けてで、この録音の中でも最初の方に取られたOp.18の中の数曲にはその面影がある・・・といった記述がありまして、まぁそういうことなのかと思います。
かくなる次第で、この全集は特にスメタナ四重奏団に思い入れがある方向けになるのかな・・・
*****
さて、今ひとつはもう少しマイナーで好事家向け(?)になりますが、名ピアニスト スヴャトスラフ・リヒテルの名師匠だったゲンリヒ・ネイガウスの録音が、11枚組のセットで発売!曲の詳細はコロムビアのサイトにもまだ出ていませんが、ロシアピアニズムのシリーズで単売されていたものを纏めたものと思います。
ゲンリヒ・ネイガウスの遺産
ピアノ: ゲンリヒ・ネイガウス、 その他: ソビエト放送交響楽団
レーベル: 日本コロムビア
音質も悪いですし、ネイガウス自身指が華麗にまわるということはなく、ちょっとややこしい曲や早いテンポだとおぼつかなくなるので誰にでもおすすめはしがたいですが、リヒテルやギレリスらのファンなら興味を持たれる方も多いのでは?
もうご存知の方も多いと思いますが、リヒテルとネイガウスの間柄については、こちらの書籍やDVDにも触れられています。
リヒテル
前半はブリューノ・モンサンジョンによるリヒテルへのインタビュー、後半はリヒテル自身の音楽に関する日記録を収録。
出版社: 筑摩書房
後日注:
ここで、モンサンジョン監督の名作ドキュメント『謎 (エニグマ) ~ 蘇るロシアの巨匠』の単品DVDを挙げていましたが、いまは下のセットが手に入りやすくなっております。
併収の『ロジェストヴェンスキーの証言』ともども、ロシア好きにはまこと興味深い内容です。ぜひどうぞ。ブリュノ・モンサンジョン・エディション Vol.3 ~ リヒテル、ロジェストヴェンスキー (Bruno Monsaingeon Edition 3 ~ Sviatoslav Richter | Gennadi Rozhdestvensky) [5DVD] [輸入盤] [日本語帯・解説付]
ブリュノ・モンサンジョン監督のドキュメント集第三弾。リヒテルを扱った『謎 (エニグマ) ~ 蘇るロシアの巨匠』のほか、ソ連時代の音楽事情を赤裸々に語る『ロジャストヴェンスキーの証言』など収録。
販売元: EuroArts / King International
ネイガウスに限らず、戦前から演奏していた人の演奏の詩情はなにか違いと思います。私には、戦後の演奏家は、音を綺麗に弾くことばかり熱心で、世評は”情熱的”であろうと根本的に神経質な気がしてしまいます。それでついつい、バックハウスやフィッシャーや・・・
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弦楽四重奏の録音をご紹介したついでの与太話を。
ここしばらく中堅若手の“有名”弦楽四重奏団を聴きに行った感想なのですが、荒々しいテンポやアタックで表情を付けたり、風変わりな節回しが斬新であるにせよ、ごくごく普通に四重奏らしいアンサンブルはどこへ・・・と思う事が多くていまひとつでした。
TVドラマと一緒で、極端なデフォルメ的演奏で、聞き所・見所を判りやすくしてくれているのかも知れませんが、それもなんだかなぁと。激しくスカッと聴きたいなら、ロックでもなんでも良いものは他にありますし・・・
友人に薦められてみたスメタナ四重奏団のDVDですが、この中に小一時間のドキュメンタリーも収録されております。
SMETANA QUARTET DVD, Import
スメタナ四重奏団のドキュメンタリー(57分)とスメタナの弦楽四重奏第一番・二番など三曲の室内楽曲の演奏を収録したDVD。
販売元: Supraphon
全体的には、当たり障りのない思い出話ですが、一カ所面白いところがありました。彼らが山小屋(?)に籠ってよく練習していたという回想で、注釈が山ほど書き込まれた譜面が映されたり、何度もメトロノームできっちり合わせて練習しただとか、それを録音してみてまた皆で練り直しただとか・・・、そんな具合に飽かず練習した日々を振り返ってまして、あのアンサンブルの背後にはさもありなんと感じました。
これまた序でながら・・・
ここでロシアのボロディン四重奏団の2枚組も大変おすすめしたく思います。昨年亡くなったチェロのベルリンスキーによるマスタークラス映像がたっぷり1枚分収録されていて、これも大変関心させられる内容でした。
高い合奏能力は、こういったことを注意して出来上がるのかと、ほんの一端ながらも知ることができます。室内楽が苦手な人にはよい足がかりになるかと存じます。
ボロディン弦楽四重奏団 [DVD]2枚組
ボロディン弦楽四重奏団の名演奏と貴重なマスタークラス・レッスンの実況を収めた2枚組。マスタークラス講師は、創設メンバーでチェロ担当のベルリンスキー。室内楽が苦手な方にも楽しめるきっかけになるやも。
販売元: アイヴィーシー
詳細は、以前記事にしておりますので、ご興味あれば(http://sergejo.seesaa.net/article/110471632.html 旧ブログの頁です)。アンサンブルはこんなに細やかに注意しながらなされるんだなぁとびっくり致しました。
このDVDには、ベルリンスキーのインタビューがかなり長く、30分ほど収録されております。若き頃に弦楽四重奏を志したものの、周りには食えないぞと脅されて、なんて回想もあり。そこでベルリンスキーは、それならそれでと音楽に打ち込むぞ、と決意したそうな。こういう気概も、古き良き時代の音楽家の心意気になってしまったのでしょうか。
往年の名演奏家の合奏能力は、概して高かったような気がするのですが、どうでしょう。自分に勝手に弾く典型であるサンソン・フランソワだって、交響曲や室内楽などの合奏になると、今時の若手の有名どころよりも、きちんと周りに合わせていたり。
弦楽四重奏団で言えば、戦後の名団体とされるアルバンベルクSQだって、実演でも録音でも、そんなにいいものなのか・・・
では
最近の新譜から 2009年10月&11月 その2:ギュンター・ヴァント指揮 ミュンヘン・フィルの国内盤キングレコードから発売
輸入版で、Profil/Hänsslerレーベルから発売されていたギュンター・ヴァント指揮 ミュンヘン・フィルの一連の録音があります。私も大変好きな演奏。
録音年代は1993年から2001年までですから、チェリビダッケがまだ常任指揮者をしていた頃から、没後ほんの数年まで、ヴァントがミュンヘンに客演に呼ばれてできた作品。
曲目を書いておきますと、全て交響曲で、ブルックナー Nr.4,5,6,8,9、シューベルトの最後の二つ交響曲 未完成と9番ハ長調大交響曲、ブラームスの1番にベートーヴェンで同じく1番。これで8枚組。
この国内盤がキングレコードから発売されました。全部で7種8枚(一つだけ二枚組)。国内盤の解説を読みたい方、一部だけ聴きたい方、少しずつ買い集めたい方にはちょっと便利になります。といっても、三枚買えば輸入版の総額になってしまいますから、Boxで買うのがいいように思いますが・・・
幾つかリンクしておきましょう。
ブルックナー:交響曲第8番/シューベルト:交響曲第8番 2枚組
ギュンター・ヴァント指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
販売元: キングレコード
ブルックナー:交響曲第5番
ギュンター・ヴァント指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
販売元: キングレコード
ブルックナー:交響曲第9番
ギュンター・ヴァント指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
販売元: キングレコード
シューベルト:交響曲第9番ハ長調
ギュンター・ヴァント指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
販売元: キングレコード
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上のブルックナーは普通に聴いても面白い録音ですが、ヴァントが音楽監督や首席指揮者として指導したケルン放送交響楽団やNDR交響楽団(北ドイツ放送交響楽団)との録音と比べてみると随分違っていて、あれこれ興味深いです。
全体的に大変のびやかで大きなヴィブラートで歌いますが、これはチェリビダッケが指導したミュンヘン・フィル自体の特徴がよりでているせいではあるまいか・・・NDR交響楽団との録音とは随分違います。実際のライブ会場でどう響いたかはわかりませんが、録音ではそう聞こえます。これはヴァントも好むところだったのか、好まざるところなのか・・・
なにごとも指揮者の腕次第と思ってしまいがちですが、このような聞き比べをすると、どの辺りが指揮者個人資質の違いで、どの辺りがオーケストラの特性なのか、なかなか難しくて迂闊に言えなそうですね。
ちゃんとわかる人からすると、ミュンヘンにもNDRにも共通するヴァントの指揮の特質はかれこれ、などとはっきりしていたりするのでしょうか・・・
ヴァントの録音ですと、現在手に入りやすいものは、
後日注:ここで単品のNDRとの録音その他を挙げていましたが、CD28枚組+DVD1枚の安価なセットが出ているのでこちらに致しました。これはベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーの交響曲全曲に、モーツァルトやシューマンも幾つか入っておりまして、ドイツ・オーストリアの交響曲の入門としても大変便利なセットと思います。奇を衒わずに真面目な演奏である、しかし平板なんてことは微塵も無く十二分に楽しめる・・・こんなところもお薦めしやすいポイントです。
Gunter Wand Great Recordings Box set, Limited Edition, CD+DVD, Import
ギュンター・ヴァント指揮 北ドイツ放送交響楽団, ケルン放送交響楽団
聞き比べに、チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィル。こちらも安価なBox-setがあって、おすすめです。まずは、ブルックナーの録音。なにを言うまでもない、チェリビダッケの代表録音。
Bruckner: Symphonies 3-9, Te Deum, Mass in F Minor 12CD Box set, Import
Sergei Celibidache指揮 Münchner Philharmoniker
レーベル: EMI CLASSICS
ブルックナー以外の、ベートーヴェン、ブラームス、シューベルト等、ドイツ・オーストリアの交響曲を集めた12枚組もあります。シューマンのラインなど実にゆったりと雄大でこの曲でも最上の録音の一つでしょう。第三交響曲ラインは多分地味な存在かと思いますが、1950年という彼の活動でも最後の方に書かれた曲で、実質的にはシューマンの最後の交響曲と言っていい作品。私も作曲の順序を忘れていましたが、この録音で「4番より老練な曲と思うけれど、なぜだろう」などと思って、シューマンの伝記本で調べ直したり・・・
あと、ブラームスの曲の幾つかの楽章、例えば、第四交響曲の第一楽章などほんとに奇麗な演奏です。
Celibidache: Symphonies 12CD Box set, Import
Sergei Celibidache指揮 Münchner Philharmoniker ブルックナー以外のドイツ・オーストリアの交響曲集
レーベル: EMI CLASSICS
もう一つ、序でですが。フランスとロシアなどの曲集。チェリビダッケが得意として、世間でも評判のラヴェル版『ボレロ』も収録。私がこの中で一番好きなのは、チャイコスフキー『くるみ割り人形』組曲。
クラシックも聞き込んでくると忘れてしまうような入門的泰西名曲ですけれど、素直に面白い!楽しい!と思い出させる名演奏。
French and Russian Music 11CD Box set, Import
Sergei Celibidache指揮 Münchner Philharmoniker ブルックナー以外のドイツ・オーストリアの交響曲集
レーベル: EMI CLASSICS
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ヴァントやチェリビダッケはどんな人?とお思いの方には、ドキュメントDVDは、演奏会や練習風景、インタビューが収録されていておすすめです。二人のDVDは私も見ておりますが、人柄が伝わる面白い内容でした。
ヴァントの方は輸入盤ですが、私が購入したものは日本語字幕がありました。
上のヴァントの28枚組Boxに付属のDVDはこれと同じ内容です。*1
Gunter Wand: My Life, My Music (2pc) / RCA RED SEAL Legendary Visions [DVD] [Import]
Gunter Wand
チェリビダッケは、
チェリビダッケ ~ 何もせずとも…進化させよ [DVD]
監督: ジャン・シュミット=ガレ 出演: セルジウ・チェリビダッケほか
レーベル: Arthaus
これついて以前幾らかご紹介する記事を書いたので、ご興味あれば(http://sergejo.seesaa.net/article/120443527.html)。
ヴァントにしてもチェリビダッケにしてもリハーサル映像などもいろいろありますので、CDショップにしろ、YouTubenにしろ、探してみると面白いです。
ひたすらリンクばかりになってしまいましたが、本日はこの辺りで。では!
最近の新譜から 2009年10月&11月 その1:ウラディミール・ホロヴィッツ大全集 お買い得セット
最近、あまりやっていなかった(わたしが)ちょっと気になった新譜のご紹介です。近頃目立つのはやはり往年の名ピアニスト ウラディミール・ホロヴィッツのRCA&SONYの全録音の安価なセット。
同時期に日本企画と海外企画の類似のものが出ていて、消費者にはややこしいです。日本語版はこちら。RCA&SONYでの全録音を集大成というので、全録音入っているのでしょう42枚組。2009年11月25日発売予定で、現在予約受付中。
ウラディミール・ホロヴィッツ大全集~コンプリートRCA&ソニー・レコーディングズ1928-1989(DVD付)
完全生産限定盤 44枚組
BMG JAPAN Inc.
海外版は、リリース時のオリジナルジャケット&収録内容でRCA&SONYでの全録音を集めたという企画
Vladimir Horowitz -Complete Original Jacket Collection(Import)
70枚組
Sony Classics
こちらは2009年11月10日発売予定で、現在予約受付中。全録音というからには内容は一緒のはずで、価格的にはこちらの海外版が安価。日本語解説が必要ないならば、海外版の方がお買い得と言えます。70枚組なんて・・・と思うものの最終的に10余枚聴くならこちらがお得。
上の二種のBox-setはどちらもホロヴィッツのRCAとSONYの録音を全て集めたと唱っているのになんでこんなに枚数が違うのか・・・。録音内容比べるにもこんなに枚数あるとなんともですね。
国内企画には、ホロヴィッツ・イン・モスコウのDVD収録とのことですが、これは単売もされています。
ホロヴィッツ・イン・モスクワ [DVD]
祖国ロシアへ60年ぶりに帰国、86年にモスクワ音楽院大ホールで開催したリサイタルの模様・インタビューをDVD化。
販売元: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
DVDも英語での視聴が問題なければ、日本語字幕無しの輸入版が安いのは相変わらずです。
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いきなりホロヴィッツをこんなに聴くのはという方には、こういったものは如何でしょうか?ホロヴィッツのベストCDとドキュメントのオムニバスDVDのセットと評伝です。
ホロヴィッツの想い出 CD+DVD
ホロヴィッツのベストCD+ドキュメントDVDの二枚組。これからホロヴィッツを聴いてみたいという方にはうってつけのアルバムです。
販売元: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
ホロヴィッツの夕べ
ホロヴィッツ夫妻と親しく交際したデヴィッド・デュバルによる評伝
出版社: 青土社
名ピアニストもさまざま居るので、国籍や時代を違えて、何人か聴いてみて、その上で、「やっぱりホロヴィッツだ!」と思いが強くなってから、上の浩瀚な全集を考えてみるのも良いかと思います。特に最近、「クラシック聴き始めた!」方には、あまり買い急がないで、大きな図書館やレンタルCD屋等等で、いろんな作曲家をいろんな演奏家で、いろいろ聴いてみることがおすすめかも・・・と思います。
では!
2015年秋口に発売のこのホロヴィッツ ライブ録音全集。未発表音源があって、これはかなりのホロヴィッツ・フリーク向けでしょう。上のCompleteとの重複も多い由。
未発表音源が結構ぼろぼろらしく、不出来だった初の日本公演はめずらしいわけではないとかなんとか、レビューの書き手のコメントがなかなか興味深いです。
Vladimir Horowitz in Recital - The Complete Columbia and RCA Live Recordings 1965 -1983 (スペシャル日本語翻訳ライナーノーツ封入) Box set
50枚組
Sony Classical