一見音楽に関係なさそうですが・・・F.M.Alexanderの著作読んでみました

フレデリック・マティアス・アレクサンダー著『自分のつかい方』(晩成書房)のAmazonの商品頁を開くさて、今回はアレクサンダー・テクニックの創始者のF.Matthias Alexanderさんの著作を取り上げます。体の使い方・体の意識の改善といったことで、音楽に関係なさそうですが、そうでもありません。

そもそも、アレクサンダー・テクニックとはなんぞや・・・説明はいろいろありますが、わたしの理解でえいやと言ってしまいましょう。

体の癖 - これも言ってしまえば、自分は気づかないうちに体のあちこちで不必要に入りっぱなしの筋力です - を取りのぞいて、柔軟で楽に軽く動く身体へと改善する訓練。そして、その訓練を通じて、発想自体も変わるのがおもしろいことだなぁ、体と同時に心も柔軟になるのだなぁ、、、と、まぁこんなところです。

楽家やダンサー、舞台芸術パフォーマーに、これを練習する方が多いようですが、その練習法は、歩いたり、椅子から立ったり座ったり、手を挙げたり下げたりといった日常動作でも十分にできるもの・・・といいますか、体の癖は、日常レベルの自分の動きに潜んでいるので、そこから治さないとよろしくない!・・・こういう考えですから、誰にでも役に立ちうるものです。

椅子の座り方ひとつも治していくのですから、わたしのような音楽を聞くだけの人間にも役立たないわけがない!演奏会で楽に椅子に座れないと終演時に腰だのなんだの痛くなってしまいます。

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実際にやってみると、目指す身体のバランスは、古武術だろうと、ヨガだろうと、バレエだろうと、一般スポーツだろうと同じもので、アレクサンダー・テクニックだからなにか特別なんだと気負いすることもないと思います。*1

筋力をつけて、Maxのパワーを出した際にバランスが取れていることを目指すのではなくて、まずはミニマムの状態でバランスを目指す。この点は、一般スポーツより、古武術・ヨガ的と言っていいでしょうか?動き出しの瞬間から、軽く楽に早く動く、無駄のないバランスをかなり繊細に追求します。世間的な説明では、止まった姿勢を語るものが多いけれど、動きを考えているのもよいところでしょう。*2

なにはともあれ、ひとつアレクサンダー・テクニックをわたしがおすすめしたいのは、その四主著を読むと、彼自身がいろいろ悩んで試行錯誤を繰り返し、なんとか改善していくさまが克明に・・・それはくどくどくどくど説明されていて、われわれ自身が自分の練習法をきちんと考えるのに役に立つと思うからです。

ちまたのトレーニング本だと、「○○の運動を反復しよう」「○○なイメージでやれば良い(例:天井から釣られているイメージで!)」などと済ませがちなところをもっと深堀し、実際にどう動けば良いかを正確に捉えるために大変な尽力をしております。そこが大変ユニークだと思います。

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目指す動き方はなにか、心身の関係とはなにか、それを示す良い映像がありました。この映像の31分40秒から。


埋め込み映像だと時間指定がうまくいかないので、リンクは http://youtu.be/1YWBx-6jV3Q?t=31m40s

アレクサンダー・テクニックとは関係ない、Adam Curtis製作のドキュメントからの一コマですが、とある女性の気落ちしている最中と気が晴れた後の姿勢の変化を映しております。

このように動けば良い、のではなくて、この方向で改善を続けることが大事です。そして、実際にどう動けば改善するのか・・・無駄な癖だらけで思う様に動かない体をどうするか・・・外見だけ似た様に動いても、ほんとうに”正しく”動けているのか・・・そういった問題にアレクサンダーさんは深く分け入ります。

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では、さっそくアレクサンダーさんの四主著の紹介といきましょう。巷に同テクニックの入門書・解説書は山ほどありますが、私の経験でいいますと、やはり本人の著作四作品を読むのが一番わかりやすいと思います。

入門書や解説書にも良いものもありますが、誰にでもわかりやすく表現しようと努力するが故に、すんなりわかった気になってしまってかえって取っ掛かりがないように感じます。

アレクサンダー自身の著作は、さまざまな実例をまぜて、くどくどくどくどとあっちの方向から、はたまたこっちの方向からと説明していて、読んだだけでは、まどろこしくてわかりにくくもあるのですが、実際にレッスンを受けたり、または自分で練習をすすめていくと、かえってそのややこしさがヒントになることが多いと思っております。

主著四作を書きすすめる内に、アレクサンダー自身の説明の仕方・言葉遣いが、ややこしいものから、シンプルかつユニークなものへと段々と変わっていきますが、その差を感じ・考えることもおおいに理解の助けになります。自分の経験が増すにつれて、なぜそういう変化が起きたのかいろいろと思うこと・感じることがでてきます。*3

さてさて、ここで私が不用意なまとめを書いても混乱致しますし、意見がやっぱり偏ってしまうでしょう。そもそも、そんなことを避けるために、本人の著書を読むのですから、あくまで原書を読む為のちょっとした手引きとお考えください。*4

◎四冊の主著

http://en.wikipedia.org/wiki/F._Matthias_Alexander#Works

にある通りの四冊です。いろいろな出版社から出ていて迷いますが、Mouritz版が校訂も一番しっかりしています。*5

F.Matthias Alexander著 Man's Supreme Inheritance(Mouritz) の商品写真  Man's Supreme Inheritance
F.Matthias Alexander著

Mouritz
260頁
アレクサンダー最初の著作。

F.Matthias Alexander著 Constructive Conscious Control of the Individual(Mouritz) の商品写真  Constructive Conscious Control of the Individual
F.Matthias Alexander著

Mouritz
280頁

F.Matthias Alexander著 The Use of the Self(Orion) の商品写真  The Use of the Self
F.Matthias Alexander著

事情は不明ながらこれのみMouritz版がなく、Orion版。
123頁

この三作目のみ日本語訳が出ていて、
フレデリック・マティアス・アレクサンダー著『自分のつかい方』(晩成書房)のAmazonの商品頁を開く『自分のつかい方』
フレデリック・マティアス・アレクサンダー著
晩成書房

そして最後、四作目が

F.Matthias Alexander著 The Universal Constant in Living(Mouritz) の商品写真  The Universal Constant in Living
F.Matthias Alexander著

Mouritz
416頁

これにプラスするなら、投稿記事&講演集の

F.Matthias Alexander著 Articles and Lectures(Mouritz) の商品写真  Articles and Lectures
F.Matthias Alexander著

Mouritz
244頁

主著四冊読むのも大変ですから、このArticles and Lecturesは手に入れても入れなくともよいような・・・。特別に目新しい内容とも思わなかったので、他に読むなら弟子筋の回想などをおすすめします。後述。

購入につきまして、Amazonでは在庫切れだったり、エラい馬鹿げた価格になっていることも多いと思います。そんなときには、英国のMouritzに直接注文するのが最善策です。私も数度直接購入経験がありまして、無事届いております。

◎アレクサンダーさんの著作は難解か?

その思想が読み手にとって新しいから難しいのであって、言葉や説明自体は懇切丁寧で簡明さを追求し、言葉自体平易なものを選んでいると感じました。序文をものしているジョン・デューイ John Deweyや時折引用されるオルダス・ハックスレー Aldous Huxley の文章の方がよほどややこしいです。*6

とは言え、アレクサンダーさんの著作は難解だとはよく言われることです。多分、処女作 Man's Supreme Inheritance の第一部がその印象を強めているでしょう。構文も幾分複雑で、センテンスは長く、いわゆるbig words(難解な言葉)も多め。私も難儀致しました。

著作を重ねるごとにアレクサンダーさんの文章はわかりやすくなります。特に三冊目のThe Use of Selfからは、かなり楽になります。

◎四冊の著書を読む順番は?

著者の思考の変化を追体験しやすいので、やはり順番通りをおすすめしたいです。ただし、上の項で書いたように、処女作 Man's Supreme Inheritance の第一部など読み難さに困ったら、この部分だけを後回しするのも一案です。

一番短くて、安価なThe Use of Self、邦訳『自分のつかい方』(晩成書房)もあるこの三作目からはじめるのが無難と言えば、無難でしょうか。

ただ、三作目のThe Use of Selfは、言葉づかいは簡単だけれど、初心者にはそのユニークな表現・思想の勘所がわかりがたいように思います。そこを考えると、最初の二作 - Man's Supreme Inheritance と Constructive Conscious Control of the Individual - の方が初心者にもとっつきやすい・・・けれど文章が難解、という困った具合です。一回読んでわかるものではないので、再読して、実際に体を動かして自分で考えて、また再読して・・・を繰り返すほか、どうしようもありません。「なんだかわからない」と諦めずにのんびり付き合う気持ちでいくのが肝要と思います。

ちなみにこの邦訳『自分のつかい方』(晩成書房)は、翻訳された鍬田かおるさんが丁寧な仕事をされていて、すっかり感服いたしました。問題があるとすれば、日本語で読むと、すーっと入るだけにわかった気になってしまうことでしょう。英語の原書とあわせて読むことをぜひにとおすすめしたいです。

逆に英語の原書だけ読んでいて、ところどころ理解に自信がない・・・という方は、ぜひこの日本語訳をお手にどうぞ!

◎四冊全部読まないといけないの?

著作によって、その章によって、その説明の仕方や切り口を変えてくれていますし、ちょっとした心身の運用法・練習法、その失敗談等々、あっちこっちにヒントが見つかるものですから、やはり全部読むに超したことはないと思います。

私の経験で言いますと、例えば、椅子から立ち上がる・座るの練習法は、方々に書かれてあるけれど、『Man's Supreme Inheritance』の第二部でもっとも詳述をされていて、それが理解の糸口になりました。

そんな次第で、あっちこっちのちょろっとした記述の中で、「はっ!」と思う事はひとそれぞれのはず。御予算やお時間がゆるされる限り、やはり全部読まれることをおすすめしますし、わたしもすべて読んで良かったと感じております。

◎実際にレッスンを受ける前に読むべきか?

アレクサンダーさん自身は、実際のレッスン前に著作を全部読むようにと指示していたそうです。

私の経験でいいますと、私は巷の入門書・解説書のみ数冊読んでからレッスンを受けましたが、アレクサンダー本人の著作を読んだ後、レッスン前に読んでおけば良かった・・・と感じたものでした。

◎その他

アレクサンダー氏は、1869生まれ、1955没の大英帝国臣民です。the savegeとthe civilizedといった侮蔑的な表現がそこかしこにあります。未開の日本があっと云う間に西洋流を身につけたのは人間の適用力を示してあまりある、といった記述も見つけられます。

この当時の人の思考・言い回しの癖があって、アレクサンダーもそこから逃れがたかったのだな、、、と、ここまで興味をもってお読みの方なら、広い心でうまく対処できるものと思います。

アレクサンダーさん自身、そういった癖をみずから気づいて直したようでもあります。ひとつ例を挙げますと・・・

処女作 Man's Supreme Inheritance の1918年増補・改訂版で、第一次世界大戦を背景にドイツと英国を比較していますが、いちおう軍国主義批判の体裁ではあるものの、傍目にはかなり乱暴なドイツ批判を繰り広げています。しかし、最後の著作The Universal Constant in Living の中で第二次大戦の前夜の経緯を語る際には、そういった自国優越主義はなりを潜め、自国は勿論、自分たち英国市民個々人に反省の目が向かっています。

チェンバレンの宥和政策、独伊への戦争指導者への批判が強いけれど、我々自身の対応はどうだったのか?独伊がどういう道に進むのか半ばわかっていながら、戦争直前まで彼らに軍需物資を売り続けていたのはわれわれ自身ではないか?だからこそ彼らは戦争を始める事ができたのではないか?アレクサンダーはそんな疑問を語っております。

晩年の著作になるほどに、スペンサー的進歩主義者の口調なども減るように感じます。

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かくなる次第で、楽器演奏でもしていないと関係ない体の運用法と思うなかれ!音楽鑑賞に必須な椅子の座り方だって改善させるものなので、音楽愛好家には必ず役立つその内容。

しかも、体の訓練を通じて、心や思考の柔軟性を取り戻すことも目論む、といったものですから、日頃ついつい「あれが絶対!これが絶対!」と頑固に言い張ったり、「もう自分の好みはこれで固定してます」なんて凝り固まってしまったり、批評家の意見に依存したりなんてことがある向きにも、アレクサンダー氏の著作はいろいろ改善のヒントを与えるものと思います。

毎度おはずかしい駄文ではございますが、

F.Matthias Alexander著 Man's Supreme Inheritance(Mouritz) の商品写真  Man's Supreme Inheritance
F.Matthias Alexander著

Mouritz
260頁
アレクサンダー最初の著作。

F.Matthias Alexander著 Constructive Conscious Control of the Individual(Mouritz) の商品写真  Constructive Conscious Control of the Individual
F.Matthias Alexander著

Mouritz
280頁

F.Matthias Alexander著 The Use of the Self(Orion) の商品写真  The Use of the Self
F.Matthias Alexander著

事情は不明ながらこれのみMouritz版がなく、Orion版。
123頁

この三冊目のみ日本語訳が出ていて、
フレデリック・マティアス・アレクサンダー著『自分のつかい方』(晩成書房)のAmazonの商品頁を開く『自分のつかい方』
フレデリック・マティアス・アレクサンダー著
晩成書房

そして最後、四冊目が

F.Matthias Alexander著 The Universal Constant in Living(Mouritz) の商品写真  The Universal Constant in Living
F.Matthias Alexander著

Mouritz
416頁

これらの著作にご興味を持たれる一助になれば幸いです。では!




追記その1:レッスン&自主練習

レッスンも先生によっていろいろ教え方も違うようですし、価格も安くはないですから、取りあえず懐具合を見て、3〜8回ほど受けて、そこで今後どうするか考えてみてはどうでしょう?

レッスンを受け続けたら高くなるし・・・と手を出さないよりも、試しにちょっとやってみる方がましかと思います。

その少ない回数を実りあるものにし、今後の自主練習に役立てるために、前もって、アレクサンダーの著作を読んだり、ネットで解説や映像をあれこれ探ってみたり、自分なりに練習してみて、あれこれ疑問を見つけておくのがよろしいかと存じます。

自主練習に役立つ教本はいろいろありますが、私の経験から幾つか挙げますと・・・

サラ・パーカー著『アレクサンダー・テクニーク入門』(ビイングネットプレス) の商品写真  日常動作でどう練習するかについて、このサラ・パーカー著『アレクサンダー・テクニーク入門』(ビイングネットプレス)が大きなヒントになります。その内に自分でもあれこれ思いついて、例えば、ちょっと頭を洗っていてもその姿勢や腕の動かし方が気になったりするでしょう。

大事なのは、なにかをしようと思った時に、できる限りきちんと次の姿勢を描いてみて、そこであたかも自動的に体がすーっと動き出してくるか、を観察すること。動いてこない場合、なにが障害(どこの筋肉が違う方向に引っ張っているか)か発見すること。次はうまくいくようにと慎重にやり直すことかな、と。

繊細に感じ取れるようになればなるほど、いままで不必要な筋力を用いて雑に動いていたとわかるでしょう。また、動き出す前の力の入り具合で「これはダメ。やり直し。」ともわかってくるものでしょう。最初はなんだかわからなくて当たり前です。私も鈍いので、数年はわかったようなわからないような感じしかありませんでした・・・

トーマス・マークほか著 『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(春秋社)の商品写真  自分体の構造に詳しくなるには、トーマス・マークほか著 『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』(春秋社)がおすすめです。ピアニスト向けという体裁ですが、誰にでも使えるものなのでお気になさらず。

この本もなんのことだか最初はわからないし、読んですぐに書かれている通りに感じたり動けたりというものでもないでしょう。また、一度感じ取れたからといって、終わりではないはずです。何年も経って、あれこれやって、全体が改善された結果、前に良しと思った部分ももっと繊細に感じ取れて、「あぁ以前はダメだった・・・」と思い返しなどするはず。

初めの内は、「なんだかわからない」と思いながらも、地道に、書かれている諸部分を、それこそ一個一個の関節を感じて・静かにゆっくり動かして(上述の”動き出すのを待つ”ようなやり方で)、自分の不要な緊張はどこにあるのかなど感じ取っていけばいいのだと思います。その内、いろいろ要領が掴めたり、どうすれば良いかアイディアがでてくるでしょう。

原島 広至監修  河合 良訓文・イラスト 『肉単』(NTS) の商品写真  もっと解剖学的知識が必要な場合など、価格と内容を鑑みると、この原島 広至監修 河合 良訓文・イラスト 『肉単』(NTS)でひとまず十分と思います。自分の体で無駄に引っ張っている筋肉を発見した時に*7、この手の本でどこの筋肉か目星をつけると、もろもろ役に立つことがあります。

ジョン・スコット著『アシュタンガ・ヨーガ 』(産調出版)の商品写真  B.K.S.アイアンガー著『ハタヨガの真髄』(白揚社)  の商品写真  自分の体を感じる能力を高めるにヨガも有効です。前屈ができないのは、ゆるめられていない筋肉(=無駄にひっぱったままの筋肉)があるからで、そこに痛みが生じます。無駄にひっぱっている筋肉がどこにあるかを、痛さが教えてくれる。そこを無理して、とあるポーズになるのではなく、緊張が抜けてそのポーズに向けてじわっと動くのを待つ。

有賀誠司著『基礎から学ぶ! 筋力トレーニング』(ベースボール・マガジン社)  の商品写真  それを言うと、いわゆる筋トレも同じことで、うまく持ち上がらない時、左右前後にバランスが崩れたときなど、なにかの癖(=無駄にひっぱっている筋肉)がある。あまり負荷が高いと、練習後も力が入りっぱなしになりかねませんが・・・

感度が高い人なら、自分の日常動作を省みて、すぐに自分の癖に気づけるのでしょう。私が鈍いせいなのか、ヨガのような痛いポーズを取ったり、筋トレの重い負荷を掛けてはじめていろいろ感じ取れるようになります。

何十キロも走ったり、歩いて、すっかり疲れたことに初めて、片足が外旋気味だとか、背中が片方にヨレたりといった癖を発見するのと似たことかなと。

思うに、極端な状況で発見した自分の癖は、大概日常のささいな動作でも生じているものです。大切なのは、日常動作に潜むその癖を発見することと思います。ヨガのときの癖、筋トレのときの癖、走っているときの癖、などと分けて考えるとよろしくないでしょう。

極端な状況下で何度かその癖を感じた後だと、日常のささいな動作にもそれを発見しやすいと思います。

これら、合う合わないもあるでしょうから、類書の中身を書店でお確かめの上、あれこれ試されるのが宜しいかと存じます。



追記その2:かなり続けた結果、あれこれ疑問が生じたときに

ルーリー・ウェストフェルト著『アレクサンダーと私』(壮神社) の商品写真  練習をかなり続けていくと、「アレクサンダーさんの言っていることはほんとにそうなんだろうか?」ですとか、「どうもアレクサンダーさんのこの説明のニュアンスがわからない・・・入門書をいろいろ見てもなんだか・・・」といった疑問が生じてくると思います。

そういった疑問には、第一世代のお弟子さん筋の回想録を読むことが、私には一番参考になりました。

Walter Carrington & Sean Carey, Explaining the Alexander Technique: The Writings of F. Matthias Alexander(Mouritz) の商品写真  Walter Carrington & Sean Carey, Personally Speaking(Mouritz) の商品写真  ここでは試みに三冊挙げてみましたが、どれも大変おもしろい本でした。

この三冊の英語の原書であれば、出版元の英国Mouritz社のサイトで直接購入するのが確実です。

自分の解釈で良かったのだと思うこともあれば、直弟子の間でも意見がわかれるなら、こりゃ曖昧と思うほかないだとか、いろいろ発見がありました。

アレクサンダー・テクニックの講師になるのでもないならば、アレクサンダーさんを絶対視する必要もありません。自己観察&改善の一手段としてつきあうのが健全と思います。

彼の良いところも悪いところも含めて、自分の心身の観察力・コントロールを日々地道に向上する良い有益なヒントとするのが大事で、その為には、信じるのではなく、自分できちんと感じ・考える姿勢が必要なのでしょう。*8 *9 *10

*1:例えば、横から見た際に、くるぶし、膝関節、股関節、肩関節、耳が一直線、という姿勢を理想とするのは、アレクサンダーだろうと、ヨガだろうと、バレエだろうと、ウェイトトレーニングだろうと一緒。はっきりそう書かれた伝書は見たことはないですが、古武術でもそうでしょう。

*2:そもそも、止まった姿勢が、ほんとに動いていないと言えるのか、考えどころです。まったく動いていなかったら、立ってもいられずに床に崩れ落ちてしまいます。

*3:もっとすすめていくと疑問を持つこともあるでしょう。それは後述。

*4:ちなみに私の英語力は、何年も前にTOEIC900点以上を出しましたが、その後は何年も自分の興味で英語に接する程度です。日頃ネットで英文を読んだり、年に数冊程度でも英書を手にする習慣のある方ならそれほど苦労はないと思います。

*5:安いものには、デジタルデータを適当に製本したものがあるのでご注意を!乱丁、頁折れなどおかまいなしで私もひどいめにあいました。

*6:インテリほど言葉に囚われている己が見えないまま、自分は言葉の熟達者などと思い込んでいる。他山の石であります。

*7:ちなみに筋肉は押すのではなく、引くだけです。引いて力を発揮します。押すような動きも、常にどこかが引くことで作られています。

*8:例えば、アレクサンダー・テクニックは、頭と首あたりのゆるやかさ・自由さを第一義で「ここだけやってればよろし」に聞こえるのですが、実際どうなのでしょう?アレクサンダー自身、体の方々を動かして注意してそれこそ脚やあばら骨と注意が向かう。その時、部分部分に注意を限定させずに、頭と首あたりのゆるやかさ・自由さも思い合わせられる - これが大事なのでしょう。では、実際の練習でそれができるかというと、あっちこっちに行ったり来たりなのだと思います。頭と首重視がどうもいまいちで、足の裏・膝・股関節・背中となったり、そんなことしていたら、また頭と首もより注意出来る様になったり。結局、頭と首も体の他の部分との影響の中にある一部なのだ、と思います。

*9:アレクサンダー・テクニックは元より自分できちんと感じ・考えることを主眼においた訓練と思います。ヨガでも合気道でもなんでも似たような部分のある違うものに接して、”あわせて考える”ことなどすると、無闇な信奉を防ぎやすいやも。

*10:多分、この段階に至ると、言葉を使うこと、話すこと、書くこと、表現することについて、いろいろ思うことがあるのでは?なにを読むか・なにをするかのアイディアはいま考えることでもなく、その頃には目星がつけられると思います。