最近の新譜から 2009年10月&11月 その3:スメタナ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集(8枚組)&ゲンリヒ・ネイガウスのピアノ録音集(11枚組)

引き続き、2009年10月&11月の新譜からわたしがちょっと気になった物をずらずらっと並べます。今日は二つで、共に2009年11月18日発売予定で、現在予約受付中。

一つ目はかなり嬉しい!もので、チェコの名カルテット スメタナ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集(8枚組)がセットになって再発売!いままでバラ売りで、在庫切れだったものも多くて、困っておりました。録音は1976〜1985のおよそ10年間で行われたもの。

ベートーヴェン弦楽四重奏曲は、他にもブダペストSQ、ズスケSQ等々名盤が多いですが、スメタナ・カルテットも負けず劣らずのできなんでしょうか?まだ聞いてないのでなんともですが・・・。

スメタナSQ - ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集 の商品写真  スメタナSQ - ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集
スメタナ四重奏団
レーベル: 日本コロムビア

クリスマス・プレゼントなどで、友人・知人をクラシック・ファンに近づけたい場合などにもおすすめです。

クラシックのCDやDVDをプレゼントする場合、よくご存知の方だとどれを選んでいいか気兼ねしてしまうのですが、「今から聴き始める方」向けなら気も楽です。私も、よく誕生日や結婚祝いその他でそうすることがありますが、「意外と面白かった!」と喜んで貰って、それこそ意外に好評です。実際のところは、それも単なるお世辞で贈った当人があまり聴いてないとしても、そのお子さん、もしかしたらお孫さんがお聴きになる可能性はありますし。

ベートーヴェンの四重奏の全集など傑作中の傑作も多いのですし、持っていて損は無いと、そこは気にせず贈っております。

序でながら、ズスケSQとブダペストSQのものも。

ズスケSQ -  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集 7CD, Box set, Import  の商品写真  ズスケSQ - ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集 7CD, Box set, Import
ズスケ四重奏団
レーベル: Brilliant Classics

THE BUDAPEST STRING QUART Plays Complete Beethoven String Quartets Box set, CD, Import  の商品写真  THE BUDAPEST STRING QUART Plays Complete Beethoven String Quartets Box set, CD, Import
Budapest SQ
レーベル: SONY

どちらもも基本的にしっかりした演奏で、奇抜な解釈などなく、基本に忠実。どれで聴いても損はなく、ベートーヴェンのこの曲を掴み損なった!ということはないでしょう。

ざっくり印象的に違いを言いますと、ちょっと固いかも知れないけれど、色つやがあって激しいのがブダペストSQ。アンサンブルはほんとブダペストは合ってますよね。固さは録音のせいなのかも知れません。あてずっぽうで言っておりますが・・・

ブダペストを激しさというなら、丁寧で綺麗、若い頃の佳曲でもじわじわ面白いのがズスケ・カルテット。わたしはベートヴェンのいわゆる中期のラズモフスキーがいまいちピンと来なかったのですが、ズスケ・カルテットを聞いておもしろくなりました。

名曲ぞろいなので、二組揃えて、どういう違いがあるか聴くのも楽しいかもしれませんね。

後日注:

このあと、スメタナ四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集を聞いてみたのですが・・・なんでしょう、個々の演奏が技術的に引っ掛かるところがあり、またアンサンブルもややこしいところでやや乱れがあり・・・真面目に聞いていると、ちょっとあれかな・・・。もう少し古いスメタナ四重奏団の録音を聞いた経験から、「あれ?なにか調子が悪いのか・・・」と感じました。

この全集、特にベートーヴェン後期の曲は1980年代の録音になりますが、スメタナ四重奏団の解散は1989年。やっぱり演奏に衰えがあったのでしょうか?ライナーノーツにも、彼らの全盛期は1960年代から1970年代に掛けてで、この録音の中でも最初の方に取られたOp.18の中の数曲にはその面影がある・・・といった記述がありまして、まぁそういうことなのかと思います。

かくなる次第で、この全集は特にスメタナ四重奏団に思い入れがある方向けになるのかな・・・

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さて、今ひとつはもう少しマイナーで好事家向け(?)になりますが、名ピアニスト スヴャトスラフ・リヒテルの名師匠だったゲンリヒ・ネイガウスの録音が、11枚組のセットで発売!曲の詳細はコロムビアのサイトにもまだ出ていませんが、ロシアピアニズムのシリーズで単売されていたものを纏めたものと思います。

ゲンリヒ・ネイガウスの遺産 の商品写真  ゲンリヒ・ネイガウスの遺産
ピアノ: ゲンリヒ・ネイガウス、 その他: ソビエト放送交響楽団
レーベル: 日本コロムビア

音質も悪いですし、ネイガウス自身指が華麗にまわるということはなく、ちょっとややこしい曲や早いテンポだとおぼつかなくなるので誰にでもおすすめはしがたいですが、リヒテルやギレリスらのファンなら興味を持たれる方も多いのでは?

もうご存知の方も多いと思いますが、リヒテルとネイガウスの間柄については、こちらの書籍やDVDにも触れられています。

リヒテル の商品写真  リヒテル
前半はブリューノ・モンサンジョンによるリヒテルへのインタビュー、後半はリヒテル自身の音楽に関する日記録を収録。
出版社: 筑摩書房

後日注:
ここで、モンサンジョン監督の名作ドキュメント『謎 (エニグマ) ~ 蘇るロシアの巨匠』の単品DVDを挙げていましたが、いまは下のセットが手に入りやすくなっております。
併収の『ロジェストヴェンスキーの証言』ともども、ロシア好きにはまこと興味深い内容です。ぜひどうぞ。

ブリュノ・モンサンジョン・エディション Vol.3 ~ リヒテル、ロジェストヴェンスキー (Bruno Monsaingeon Edition 3 ~ Sviatoslav Richter | Gennadi Rozhdestvensky) [5DVD] [輸入盤] [日本語帯・解説付] の商品写真  ブリュノ・モンサンジョン・エディション Vol.3 ~ リヒテル、ロジェストヴェンスキー (Bruno Monsaingeon Edition 3 ~ Sviatoslav Richter | Gennadi Rozhdestvensky) [5DVD] [輸入盤] [日本語帯・解説付]
ブリュノ・モンサンジョン監督のドキュメント集第三弾。リヒテルを扱った『謎 (エニグマ) ~ 蘇るロシアの巨匠』のほか、ソ連時代の音楽事情を赤裸々に語る『ロジャストヴェンスキーの証言』など収録。
販売元: EuroArts / King International

ネイガウスに限らず、戦前から演奏していた人の演奏の詩情はなにか違いと思います。私には、戦後の演奏家は、音を綺麗に弾くことばかり熱心で、世評は”情熱的”であろうと根本的に神経質な気がしてしまいます。それでついつい、バックハウスやフィッシャーや・・・

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弦楽四重奏の録音をご紹介したついでの与太話を。
ここしばらく中堅若手の“有名”弦楽四重奏団を聴きに行った感想なのですが、荒々しいテンポやアタックで表情を付けたり、風変わりな節回しが斬新であるにせよ、ごくごく普通に四重奏らしいアンサンブルはどこへ・・・と思う事が多くていまひとつでした。
TVドラマと一緒で、極端なデフォルメ的演奏で、聞き所・見所を判りやすくしてくれているのかも知れませんが、それもなんだかなぁと。激しくスカッと聴きたいなら、ロックでもなんでも良いものは他にありますし・・・

友人に薦められてみたスメタナ四重奏団のDVDですが、この中に小一時間のドキュメンタリーも収録されております。

SMETANA QUARTET DVD, Import の商品写真  SMETANA QUARTET DVD, Import
スメタナ四重奏団のドキュメンタリー(57分)とスメタナ弦楽四重奏第一番・二番など三曲の室内楽曲の演奏を収録したDVD。
販売元: Supraphon

全体的には、当たり障りのない思い出話ですが、一カ所面白いところがありました。彼らが山小屋(?)に籠ってよく練習していたという回想で、注釈が山ほど書き込まれた譜面が映されたり、何度もメトロノームできっちり合わせて練習しただとか、それを録音してみてまた皆で練り直しただとか・・・、そんな具合に飽かず練習した日々を振り返ってまして、あのアンサンブルの背後にはさもありなんと感じました。

これまた序でながら・・・
ここでロシアのボロディン四重奏団の2枚組も大変おすすめしたく思います。昨年亡くなったチェロのベルリンスキーによるマスタークラス映像がたっぷり1枚分収録されていて、これも大変関心させられる内容でした。

高い合奏能力は、こういったことを注意して出来上がるのかと、ほんの一端ながらも知ることができます。室内楽が苦手な人にはよい足がかりになるかと存じます。

ボロディン弦楽四重奏団 [DVD]2枚組  の商品写真  ボロディン弦楽四重奏団 [DVD]2枚組
ボロディン弦楽四重奏団の名演奏と貴重なマスタークラス・レッスンの実況を収めた2枚組。マスタークラス講師は、創設メンバーでチェロ担当のベルリンスキー。室内楽が苦手な方にも楽しめるきっかけになるやも。
販売元: アイヴィーシー

詳細は、以前記事にしておりますので、ご興味あれば(http://sergejo.seesaa.net/article/110471632.html 旧ブログの頁です)。アンサンブルはこんなに細やかに注意しながらなされるんだなぁとびっくり致しました。

このDVDには、ベルリンスキーのインタビューがかなり長く、30分ほど収録されております。若き頃に弦楽四重奏を志したものの、周りには食えないぞと脅されて、なんて回想もあり。そこでベルリンスキーは、それならそれでと音楽に打ち込むぞ、と決意したそうな。こういう気概も、古き良き時代の音楽家の心意気になってしまったのでしょうか。

往年の名演奏家の合奏能力は、概して高かったような気がするのですが、どうでしょう。自分に勝手に弾く典型であるサンソン・フランソワだって、交響曲室内楽などの合奏になると、今時の若手の有名どころよりも、きちんと周りに合わせていたり。
弦楽四重奏団で言えば、戦後の名団体とされるアルバンベルクSQだって、実演でも録音でも、そんなにいいものなのか・・・

では